電撃文庫と堕落生活*でんだら*

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暗い30のお題 17,毒

http://cosmos.jakou.com/030/030-01.html

お題17こめ

直接的な毒の表現は面白くないと思ったのでちょい捻り。
うまくいったかはわからないがな。

読んで面白かったら過去ログカテゴリーから創作小説で前のお題とか読んでくれるとうれしいな。



17毒
  俺にとって君は毒で
  君にとって俺は毒で
  だからどうしたと侵し合う

 その病院の一室は、染め上げたように真っ白に染まっていた。
 病的なまでの白さは、病院のなかだということを考慮しても、なお白い。
 その色があるとすれば、そこに存在するのは白と黒とその中間色と、
 人間特有の肌の色。
 それだけ。
 おおよそ生きている人間のいるところと言うには相応しくない。
 だがそれは妥当な感想だと言えなくも無い。

 もう彼女は生きているのかすらも分からないのだから。



 面会時間には間に合うように車を走らせたつもりだったが、予想外の渋滞は当然予想しているはずも無く、ギリギリの時間になって滑り込むようにして病院の窓口に駆け寄った。
「・・・ハァ、ハァ、・・・あの、・・・面会って、まだ・・・」
「大丈夫ですからそんなに急がなくても。まだ10分もありますよ」
 ありがとうございます。と息も絶え絶えに言い置いて、そのまま受付を後にする。3ヶ月も毎日来ているわけで、受付のおばさ・・・おねえさんとも遠い昔に顔見知りだ。
 エレベーターのボタンを押し、中に乗り込んで一息。5階という表示を見つめ、今まで何十回と押してきたボタンを押す。
 駆動音。
 軽い重力の増加と、時間経過に伴うその消失。そして浮遊感。病院のエレベーターだからといって特別に静かに動くわけでもない。そんなどうでもいいことを考えられる程度には、思考能力は回復した。空調設備も手伝って、走った分の汗も引いてきた。
 チン。というおなじみに音とともに扉が開き、5階の表示が目の前に現れる。
 面会時間終了間際。降りる人数のほうが圧倒的に多いはずで、この階でエレベーター待ちをしている人を尻目に、目的の部屋に直行する。
 彼女のいる部屋は555。
 本来の部屋番号の最後は531であるが、その特別に作られたと言っても過言ではない部屋は、4の音を遠ざけた555号室ということになっている。誰が考えたのだか知らないが、別に550号室でもいいのではないか? という疑問は最初にこの話を聞いたときから頭の中にしまってある。
 再びどうでもいいことを考えていた頭を切り替え、扉に手をかける。
 どうやって入ろうか? と悩んだのも一瞬で、どんな風に入っても一緒だな、と思い、何も考えずにドアを開けた。

 白かった。

 もう何十回も見て見慣れたはずだったが、それでもその白さはまぶしすぎて、日常の色に染まった普通の人間には刺激が強すぎるほどの白。凶悪なまでの潔白。
 その部屋に窓は一切無く、だからこそ照明の白がその白さの証明なのだろう。蛍光灯の光以外にこの部屋に光源が無いこともその白さに拍車をかける原因のひとつだろう。
 そのなかに一人。布団の中で体だけ起こして座っている少女が一人。
 彼女の見舞いのために、ここまできたのだから、彼女が無事でいることを確認するだけでまずは一安心することが出来る。
 彼女は壁を凝視して視点をはずさない。ただそれは他の人間から見た彼女のことであって、あれは凝視しているのではなく、壁に焦点をあわせたまま目を動かしていないだけ。決して能動的な視線ではなく、ただ眼球移動がつかれると、それだけのための行為、・・・行為ですらなくただの惰性に過ぎない。
 ただ、扉を開けたときに、彼女がほんの少し動いたのを私は見逃してはいない。
「見舞いに来たよ?」
 扉の前に立って、そう声をかける。
 目の前にいる彼女に声をかけた。反応は小。
「ん」
 返事は簡潔に完結。
 せっかくきてやったのに淡白な反応だな、とは、間違っても思うはずも無い。
 3ヶ月前。彼女がこうなってからずっと彼女はこのままなのだから。
 ただそれだけのこと。
 ただそれだけのこと。
「ごめんな、今日も遅くなって」
「・・・」
「ちゃんとご飯は食べたか? オレがいないからって食べないのはいかんぞ。そりゃあ病院の食事はおいしくないっていう話もよく聞くけど、少なくとも栄養バランスだけはバッチリなんだから食べないと損損。しっかり食べて大きくなるんだぞ」
「・・・」
「いやぁ、それにしても、今日は大変だった。もしなんだったら、愚痴ってもいいかい?」
「ん」
「ありがとう。そうそう。今日遅くなった理由なんだが、先輩が本当にイヤなやつでね、その先輩が―――


 会話は会話と呼べるレベルではなく、ただの呼びかけに過ぎなかったが、それにほんのごくわずかでも返答があるのならばそれは会話と呼べるものだと信じるかのように、彼は彼女に話しかけ続けた。彼女の反応は、あいかわらず無言か「ん」という無声音のみ。それでも。彼は話し続ける。
 まるで何かに追い立てられているかのように。
 まるでそれが義務だというように。
 まるで何かに冒されているかのように。


「あ、そろそろ時間か」
 10分という時間経過は、話をする時間としては短い部類に入り、だからこそ話したり無い部分ももちろん多大にあったが、それを言っていたらキリがないし、そもそも面会時間外までの面会は今までもこれからも特に特別な理由がなければ禁止されている。
「じゃあ俺は帰るけど、なにか明日持ってきて欲しいものでもある?」
 彼女の返事は無反応。
「ないんじゃしょうがないか。まあ、何か欲しいものがあったら言ってくれよ」
 彼女は再び壁に焦点をあわせたままじっとしている。
「じゃあまた明日」
 そっけない返事は、明日また会えるという安心感か。明日まで会えないという事実の裏返しか。どちらにしても変わらないか。ひとりごちて、廊下に出てドアを閉める。
 大きく深呼吸。
 その行為は自分を落ち着かせるため、そしてまた再び現実へと戻ってくるための作業的な儀式だったのだが、近頃は自分で耐性をつけてしまっているのか、気分転換などには成りはしない。
 うつむく心を抑えつつ、それでもあふれる感情を内心で吐露する。
 まったく。
 本当に。
 やってられない。
 内心の吐露が口にも出ていたようだ。すれ違った看護士がチラっとこちらを見たのがわかったが、だからといって何をするわけでもない。
 本当に。どうしようもなく腹が立つ。
 こんな感情は、3ヶ月前に生まれて1ヶ月で全部捨て去るはずだったのに、彼女を見るたびに浮き上がる感情と、そのどうしようもなさに、さらに腹が立ってきて、・・・拳をコンクリートの壁に叩き付けた。
 血がにじむ。青アザでもできてるだろう。壁はびくともして無いが、コンクリの強度に耐えられるだけの機構は人間の手には付与されていないのだから、そんな事実は当然。結局残ったのは馬鹿馬鹿しいどうしようもない男が一人と、壁にすこしだけこびりついた血液だけだった。
 はぁ。
 ベンチに腰掛ける。
 どうせ医者の見回りなんてしばらくしてから。まだいたのとか言われたら、時間忘れちゃったで通すことにしよう。
 それだけ考え、一人ベンチで思案する。


 はみ出た血肉。噴き出した血潮。舞い散る臓器。
 時速60kmで動く1トンの物体は、人体を破壊するのに十分すぎる。
 ブレーキは見事に間に合わず、彼女は飛んで、つぶれた。
 即死。
 その判断が間違ってたと判断されたのは病院に運び込まれてからで、即死ではなく、まだ死んでもいなかったため、最大限の治療が施された。
 結果、生存。
 ただ、もちろん即死寸前の彼女が全快するはずもなく、その影響は大きく、結局残ったのは、わずかばかりの思考能力と腰から上だけの運動機能。見事に腰から下の部分は脊髄が断裂。下半身不随。
 まだ生きてるだけ。まし。
 そう。
 生きているのだから。
 そう信じたのは、彼女が彼の一番大切な人だったから。
 それ以外に理由などないし必要も無い。
 だって、彼女はまだ生きているんだから。



「なまじ生きていた分タチがわるいな」
「主任、そんなこと言ってると聞こえちゃいますよ。責任問題とか大変なんですから」
「気にするな新人。どっちにしろあの二人はもうどうしようもないよ」
「そんなきっぱりと・・・」
「親御さんのいない女の子の治療費は、完全に彼から出てるんだよね」
「え、でもあの延命措置って・・・」
「そう。ああ見えても中身はすばらしく高性能でね、しかも保険がきいてないから全額負担。正直私でも払いきれるかどうか微妙な線だ」
「それでも、あの人毎日来てますけど、仕事は大丈夫なんでしょうかね?」
「そんなのは私に聞かれてもね。まぁ知ってるっていえば、今後の相談をするときにいろいろと聞かせてもらったが、まっとうな会社だったよ。普通のね」
「普通の、ですか」
「そう、普通の。まっとうな会社であれだけ休んでられるとは、それだけ気軽な重役か、または無茶してるか。私は後者だと思うけど、そこまでは個人情報だからね。推測に過ぎない」
「でもそんなんじゃ・・・」
「当然残業手当ももらえないだろうし、クビをきられるとしたら真っ先に彼だろう。彼の仕事振りなんか私が知るよしも無いが、毎日毎日終わればすぐにこちらに急行してる雰囲気だ」
「っていうか主任よく見てますね」
「私はいつも暇なのでね。精神的には」
「それサボってるって言いません?」
「真面目に仕事はしてるさ。まぁ、私のことはどうでもいいけど」
「いいんですか・・・」
「いいんだよ私のサボり具合なんか君にこれっぽちの価値も無いだろう」
「いや弱みを握っておこうと・・・」
「そうか、それはよかったこの前酔っ払って食堂で元カノがいると錯覚をおこして大声で<ピー>とか<ピー>とか言ってた新人君」
「ちょっ何でそんなこと知ってるんですか!?」
「弱みを握っておこうと・・・」
「しゅーにーんー」
「わかったわかった誰にも言って無いから安心しな新人君」
「うぅ」
「さて、無駄話も終わったし、仕事に戻るか」
「・・・うぅーっす・・・」


 医者の呟きは―――
「・・・まるで毒だな。互いに互いを侵す毒。依存してるからこそ逃げられない。・・・まぁ私に直接は関係ないか」
 ―――闇に消える。



「ふぅー」
 そんなのはわかっている。
 ベンチに居座って十数分。まったくここの医者は患者のことを少しは考えろ馬鹿。
 ・・・。
「毒・・・か」
 言いえて妙というべきか。
 彼女が重荷になっているのは事実だが、それを切り捨てるという思考なまったく、ない。
 それが自分の身を壊すと解かってても、自分を冒し、侵し、犯しつくすとしても、そんなことは一向に構わない。
 生きているのだから。
 まだ。
 二人とも生きているのだから。



 いつ終わるとも知れない身で、
 その事実を意図的に無視するかのように、

 彼女のことだけを考え続けた。







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まあなんだ。
長くなりすぎた。というかいままでと間が開きすぎた。
それなりのが出来たとは思うけど。しかし微妙。

唐突な人物登場とか、頭の中ではイメージできてるけど、それが読んでる人に伝わるのか? ときかれたら微妙と答えざるを得ないわけで、。

むずかしい。
  1. 2007/01/14(日) 11:21:40|
  2. 創作小説
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