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電撃文庫と堕落生活*でんだら*

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暗い30のお題 5,魅せられる

http://cosmos.jakou.com/030/030-01.html

お題5つめ。

なんの捻りもない。
うーん。捻ろうとするとネタがかぶるよ・・・


・5,魅せられる
5.魅せられる

  吸い込まれた。
  取り込まれた。
  私が私でなくなる。

 彼女こそが私のすべて。
 自分の自我さえ取り払われて、残っているのは彼女への信仰にも崇拝にも似た感情。
 ごっそりもってかれた感触はあるものの、それに対する感情も持っていかれているはずで、何も感じることはない。
 目の前に存在している神をあがめると言う行為に夢中になって、それがすべてにおいて自分だと錯覚してしまうくらい。輝いている。

 それが魅せられると言うこと。

 魔術を使ったわけでもなんでもなく、ただ単に自分の自我を預けてもいいと思える人物に出会えた瞬間、一目惚れにも似た心が彼女を求めた。
 求めたから彼女は答えたと、それだけのこと。
 答えるだけの体があり、能力があり、容姿があり、覚悟があり、責任があった。
 だから彼女に魅せられる。
 私だけの彼女でいて欲しいという願いと、しかしこの感情を誰かに理解して欲しいと言う偽者の感情が自分の中で渦巻いて混沌となりひとつになる。
 私は私だ。そう言い切れるだけの自身は当の昔に、それこそ彼女を見た瞬間になくした。
 ただ盲目的に自分の全てをささげてもいいのだろうとそういうことでもある。自分が自分でなくなり、彼女とひとつになる。
 いや、ひとつになると言うのは傲慢に過ぎる。
 彼女の一部に私がなると言うことで、彼女と私は対等ではないのだ。大きなひとつの個に付随する小さくて矮小な個である私は自分に何の意味も見出せない代わりに、彼女に意味を見出す。
 それのなんと甘美なことか。
 自分の思考を放り投げ、残った体に感情など毛頭必要ない。
 ただ付き従えるだけの人形に変わっていたとしても、だからどうしたと言うのだ。
 私が私でいる限り私は彼女であり続けると言うことだから。
 責任と義務を放り投げ、彼女になった私は、

 心の髄から魅せられていた。
  1. 2006/10/14(土) 15:53:22|
  2. 創作小説
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