電撃文庫と堕落生活*でんだら*

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【くるこい】第3話 先輩

第3話

「よう、鉱。おはよう」
「先輩。もう既におはようの時間は過ぎてます」
 何はともあれ中に入って部室のドアを閉める。外にいる人間に見られたら何を言われるか分からない。
「また授業サボって寝てたんですか? とりあえず俺がいるので服着てください」
「欲情した?」
 綾香先輩はこっちを向いて胸を強調する。腕をそろえてひざにあて、上半身を倒す。どこかで見たポーズだが気にしない。気にしたら負けだ。
「してないですから。とにかく服着てください」
 上履きを脱いで奥に入る。
 部室と行っても、教室ほどの大きさがあるわけでもなく、教室の半分の半分程度の大きさがあるだけだ。入ってすぐのところに上履きを脱ぐところがあり、そこから一段高くなって、畳が敷いてある。
 入り口に掛かっているプレートには『茶道部』の文字。
 部員二人のこの茶道部は、二人というからにはもちろん俺と綾香先輩しかいない。
「なんだーつまらないなー。チェリーボーイには効果テキメンだと思ったのに……」
「その台詞、今まで何回言われたと思ってるんですか」
 目をそらすために、奥にある戸棚から茶葉を出して急須に入れ、ポットからお湯を注ぐ。どぼどぼどぼ。
「んー、私の下着姿を見て鉱の頬が赤くならなくなるまで、かな?」
「赤くなんてなってませんよ」
「ほら、赤いじゃない」
 そういいながら俺の後ろに回りこんで、横から顔を出し、頬をつついてくる
「あーもう! じゃあ赤くなってるってことでいいですよ! だから恥ずかしいんで服着てください!」
 もうちょっと自重してください。背中にやわらかいものが当たってるんです。
「最初っからそう言えばいいのに。素直じゃないんだから」
「言ってます! あと当たってます!」
「ふふふ、当ててんのよ」
 やっと服を着てくれた。
 いい加減この人にも慣れないと……。いじられキャラのままずっと過ごし続けるのかと思うとちょっと落ち込む。
 ポットから湯飲みにお湯を注ぎ、適当に暖めておく。部専用の冷蔵庫から、抹茶アイスを取り出して、戸棚から出したさらに盛り、その上にクラッカーをのせる。
 アイスにクラッカーがのってるだけの茶菓子と、お茶を持って、部屋の真ん中においてあるちゃぶ台を挟んで先輩と二人で座る。
「ところで先輩」
「なんだい後輩」
 楽しそうだな綾香先輩。
「先輩はもう受験生じゃないんですか?」
「そうだねぇ」
 何も考えていないような雰囲気で綾香先輩は答える。ただ、それが本当に何も考えていない時など一度だってあるはずがないのだが。
 俺はというと、そろそろ時間がたったので湯飲みにお茶を注ぎ始める。
「こんなところで寝てていいんですか?」
「鉱はそう言うけど、実際、授業出ても寝るから変わりないんだよねー」
「まぁどうせこの時期の3年生なんて授業聞いてないんでしょうけど」
 綾香先輩の前に湯飲みと、適度に溶けかかった抹茶アイスを置く。
「そうでもないぞ? 聞いてる奴は聞いているし、聞かない奴は聞かない」
「先輩は聞く人?」
「聞かない人」
「ですよねー」
「ですよねー、とは何だ。それじゃ私が怠け者みたいじゃないか」
「話し聞いてるぶんと、今の状況を考えたらそう思われて仕方ないと思いますが?」
 と言っても、実際は綾香先輩は3年でもトップの成績の持ち主だ。この前張り出されてた1学期期末テストの順位で、2位と30点差をつけて一位だった。こういう人を天才というのだろうか。いや、努力家なんだろうな。才能で片付けたら失礼だと思う。
「怠けてるのはここでだけ。他は真面目にやってるぞ?」
 おどけて言う綾香先輩。それが嘘のように聞こえるようにわざと言ってるんだろう。もちろんそれを俺が実は知ってるのを承知の上で言ってるあたり、やっぱり先輩には勝てないなーと思う。
「でも俺が見てるのもここでだけなので、怠けてるようにしか見えません。残念でした」
「言うようになったなこいつ。おお、これ意外とうまいな」
「そりゃ高かったですから。あと先輩はもうちょっと気をつけて食べてください。アイスが落ちそうで怖いです。むしろ机の上にはもう落ちてます」
 それを聞いた綾香先輩は、机に落ちたアイスを人差し指ですくって、その人差し指を嘗め回すように抹茶アイスを拭き取った。
「欲情した?」
「抹茶色って時点でアウトです。しかも机拭いてないから汚いですよ」
「もしそれで風邪ひいたらここで鉱に看病してもらうからいいんだよー」
「しませんよ」
「してくれないのー?」
「しません」
「恋人なのにー?」
「俺がいつ告白されたんですか」
「私は鉱に告白されたほうがいいなー」
「俺は希望聞いてるわけじゃありません」
「えー」
 二人とも適当に会話しながら抹茶アイスを食べる。あとお茶を飲む。今日のお茶は今ひとつだったけど抹茶アイスだったからそこまで気にならないし。別にいいか。
 アイスも食べ終わり、お茶も二杯目になった。
「ときに鉱くん」
「なんですか?」
 お茶を啜りながら答える。
「ちゃんとゴムはしたか?」
「ぶぅふぉうぁ!?」
 口から飛び出た緑茶が当たりに飛び散る。綾香先輩は予想済みだったのか、横にずれて回避していた。かからなくて良かったけど釈然としない。
「大丈夫か鉱」
「大丈夫じゃありませんよ! いろいろと複合的な意味で! いきなり何言うんですか!?」
「いやーなんか噂が立ってるみたいでさー」
 先輩の話によると、朝っぱらから女生徒二人を引き連れて、往来をラブラブムードで歩いていた二年の男子がいるという噂が広がっているそうだ。
 恋人関係の噂が同学年で流行るのはわかるが、学年違うのに話題になるとかどういうことなんだ!?
 と綾香先輩に聞いたら、
「そりゃあ、その言葉にピンと来た私が噂を広めてあげたからだよ」
「アンタのせいかっ!?」
「この部室って校門見えるじゃん? 朝早く来てタバコ吸ってたら鉱が二人も女の子引き連れて歩いてると来たもんだ。これは鉱を応援しないといけないと感じて、3年で広めてあげたんだよ」
「……それって、どこがどう俺のためなんですか?」
「んーよく考えてみたら特に考えてなかった。まあいいじゃないか有名人」
「よくないです!!」
 なんでこの人まで俺の平穏を崩そうとするんだろうか。これは神様が与えた試練かはたまた今までの行いの償いか。考えたところで、どっちにしろどうしようもないので思考停止。
 俺の周りにまともなやつはいないのか? いや会華あたりはまだまともだが。
 それともこれが女子のデフォなのか? くそ見誤っていた。クラスのほかの女子とかも距離が近づけば、覚醒するんだろうか。
 思考回路がおかしい。もうどうでもいいや。
「はぁ……もうなんでもいいですよ」
 ちゃぶ台に突っ伏していたら、綾香先輩が背中にのしかかってきた。
「落ち込むなよ少年。私がついててあげるから」
「それが心配なんですよ。あと背中に何かやわらかいものが当たってます」
「当ててるんだよ。感謝しろ少年」
「あー、じゃあとりあえず……。ありがとうございます」
「んふっ、どういたしまして」
 だんだん重くなってきたのでそのまま力を抜いていく。ああ疲れた……。
「眠いです」
「寝ていいよ。ここは寝るところだからね」
「違いますよ。部活するとこです」
「じゃあ寝ちゃダメ」
「やっぱり前言撤回します」
「よろしい」
 まぶたが重くなってきた。背中には柔らかい胸の感触。綾香先輩の吐息が髪にかかる。
 ああ、今日の疲れがどっと出たのか。本格的に眠くなってきた。
「ゆっくり眠っちゃいなさい」
「すみません……」
「いいのよ」
 眠りに落ちる前に最後に聞こえた音は、唇と何かが触れ合う音だった。

   ■

 夕日が差し込んできた。
 赤い光で目が覚めた。
 どのくらい寝ていたのだろうか。部室に入ったのが4時くらいだったはずなので、日が落ちているということは……。わからん。
 そんな原始的な方法を使わなくても時計を見ればわかるはずで。顔を上げて壁に掛かってる時計を見ると、5時半。お茶菓子食べたりしてる時間も考えるとだいたい1時間ぐらいか。
「ふわあああ」
 知らずあくびが出る。寝る前まで感じていた深い疲れもそこそこに取れ、それなりに気分もいい。
 立ち上がって伸びをする。拍子に肩からずり落ちる毛布。どうやら綾香先輩がかけてくれていたようだ。なんだかんだ言って優しい人なんだよなぁ。
 その優しい先輩は、今は俺の横で寝てる。横というか足元というか。
 俺と同じようにちゃぶ台に突っ伏して寝てるのかと思いきや、普通にたたみに寝そべって寝てるし。その上俺にはかけてくれるのに、自分にかけた布団は、いつの間にか取れてしまったのか、なぜか1メートルぐらい先のほうに落ちてるし。
「先輩も、もうちょっと振る舞いをおとなしくしてれば可愛いのに」
 つい口を出てしまった言葉は、夕日に照らされる先輩の顔を見てしまったからだろうなと考えてごまかす。しかし、畳に無造作に広がる髪の毛と相まって、やっぱり美人だよなぁ……。
「今のままじゃ、嫌いか?」
「先輩起きてたんですか?」
「鉱が起きた音で起きたんだよ。それで、何だって? 私がどうすればどうだって言ったのかおしえてくれないか?」
「先輩は化粧をすれば綺麗だね。と言いかけたところですね」
「ごまかしちゃってー、照れ屋さんなんだから~」
 痛いところつかないで下さい。お願いだから。
「まぁいいかー。じゃあ今日の茶道部はここで終了。お疲れ様ー」
 相変わらず、どんな活動してるかと聞かれて困る部活してるよなぁ、と自覚。茶道を勉強するとかじゃなくて、正式名称「お茶でものみながら道徳心の向上を目指す部」通称茶道部だから始末が悪い。結局二人でだべってるだけという部活なのだが。
「はいお疲れ様でした」
 といいつつも、二人とも目をこすりながらあくびをしている。
 大体それ以前に先輩はまだ床にねっころがったまんまでしょうが。というか、
「先輩パンツ見えてますよ?」
「見せてんのよ?」
「はいはいわかりました」
 だからそういうところを直せば可愛いのに。って言うのに。
 ふと思い出したのだが、そういえばこの後俺は予定があったんだった。春名と一緒に下校するという予定が。
 でもまぁ。
 バレー部の練習なんてそんなに速く終わるものでもないし、俺としてはこのままこのまどろみのなかでぼーっとしてるほうが……って、春名!?
 窓から外をのぞいてみると、校門のところで春名がすでに待っている。あの表情は待ちくたびれたということかそれとも、まだ待ち始めてそわそわしてる状態なのか? どちらにしても早く行くに越したことはないので、素早くいくために素早く片付け。
「鉱? どうしたのそんなに慌てて」
 下手に言うと追求されまくって時間足りなくなるっ!!
「いや、このあとどうしても見たい番組があって、うちのテレビじゃないと映らないんです。早くしないと間に合わなくなるのを今思い出して……」
 言いながらも湯飲みや急須などを洗っていく。
「ああ、いいよいいよ鉱。私が洗っておく。早く彼女さんのところに行ってやりな」
「え、ちょ、だから俺は……」
「いいからいいから。女の子を待たしたら男の子失格だぞ?」
 そういってウィンク。いや。まぁ。そういわれちゃうと、従うしかないか……。俺が洗っている皿を取ろうとした綾香先輩。ということは超近距離なワケで、先輩の吐息とか、髪の毛の匂いとか、そういうものがいっきに流れ込んできて、頭が飽和状態に……。
「ほーら、さっさと行く行く」
「あ、はい」
 自分の準備といえば、かばんを背負って帰るだけなのでそのまま帰ることは可能だけど。
「何してんのっ? 早く行きなさい!!」
「は、はい! じゃあ先輩!また明日っ!」
「おうよっ! コンドームは前もって買っとけよ?」
「一言余計です!」
 扉が閉まる。俺は言われたとおり全力で校門に向かった。
 綾香先輩への礼儀だけは守ろうと思った。

   ■

「おにぃぃぃぃぃちゃああああああああぁぁぁぁぁぁああああああああああん!!」
「でかい!! 声がでかすぎるもうちょっとボリュームを下げろ!!」
「なあああああああぁぁぁにいいいいいぃぃぃぃぃ? 聞こえなぁぁぁぁいよぉぉぉぉお?」
 何なんだこのギャグ漫画は。いいから1回黙りましょう。お願いします。黙れ。
 大音量で叫ばれる「おにいちゃん」に、周囲の視線は釘付け。と言っても下校時間の中途半端な時間帯なので一人か二人がぽつんといる程度だが。
 ああっ、むしろそのほうが恥ずかしいという罠。
「ハァッ、はあっ、ふうううううぅぅぅぅぅ」
 全力で走ってきたので当然息は切れ、肩が揺れている。もうダメだ。二日分くらいの走力を使いきった感じだ。
「はぁっ、はぁっ、だから、ボリュームを、下げて、くれって、言ったん、ハァ、って言ったんだよ」
 なんで俺は息が切れてるんだよ。やっぱり今のダッシュはいらなかったんじゃないかと思い始めた。
「じゃあおにーちゃん。早速一緒に帰ろう?」
「待って、少し休ませてくれ……」
 春名はアゴに手をあて、考えるようなポーズを取る。考える人のようなポーズ。
「えー。うーん。しょうがないなあおにーちゃんは。ちょっとだけだよ?」
 はにかんだ笑顔はわりとかわいかった。
「ありがとう。わが妹ながらその優しさに感動する」
「えへへ、ありがとう!」
 そこまで褒めてるわけじゃないが。まぁいいか。
 校門のコンクリートの柱に背中をあずけ地面に座り込む。
「おにーちゃん。地面に座ると制服が汚れちゃうよ?」
「自分で洗うから大丈夫。それよりも俺の体力がやばいんです」
「貧弱だなーおにーちゃんは」
「しょうがない……うん。まぁそこまでスポーツできないのは認める。ただお前にだけは言われたくない」
「そんなー、ボクだって徒競走で1位とったことあるんだぞ!!」
「あれはカウント無しだろ。春名以外がみんな転ぶとか、なにかの間違いかと思ったぞ」
 小学校5年生。となると俺は6年生で、全員参加の徒競走で、ダントツびりになるかと思っていた春名が見事1位をとった。その時の奇蹟具合がまさに奇蹟だったので良く覚えているが、6人でやる競争で、まずスタート地点で一人転ぶ。その倒れた子が前の人の足を引っ張って前の人も転ぶ。途中で靴が脱げて一人脱落。取りに行こうとしたそのこが前を横切ったおかげでもう一人脱落者が。最終的に残った春名ともう一人だったがもう一人の子がテープを切る直前で勢いよく顔面ダイブ。晴れて春名は一位になったとさ。
 というお話。どこまでも蛇足だが。
 今バレー部でどこまで活躍できてるのかはわからないけど、昔の春名は運動オンチで有名だったとい過去話でした。
 まあそんなたわいもないことを話していれば時間はたち、俺の息も整ってきた頃になると、すでに日は沈みあたりは暗闇で満たされてきた。
「暗いな」
「暗いねー」
 俺と春名の横を何人もの生徒が通り過ぎる。今日一日のことを思い出しながらだと、他人から注目されてないのって本当に楽だなぁと実感した。……もうそろそろなにか踏み出してはいけない道に踏み出した気がする。
 俺は一体この道から帰ってこれるのだろうか……。
「……そろそろ帰るか、春名」
「そうだね……おにーちゃん」
 ふと、思った。
 ずっと立ってた春名はどこを見ていたんだろうか。夕日を眺めていた俺と、同じところを見ていたんだろうか。
 聞いてみるなんて恥ずかしい真似はしないから、必然、そんな小さなことは闇の中に消えていった。
「行くか」

   ■

「愛の料理、おいしいといいんだけどなぁ」
「ふんっ、アイが作った料理なんてまずいに決まってるよ。おにーちゃんが作ったほうが絶対おいしいもん」
 会話の中心はもっぱら、今夜の夕飯について。逢坂が作って待っているということなので、二人ともそれについて話している。
 ここで、お前のも同じくらいまずいけどな。って言ったらもうアウトだよな。今度コイツも父さんから料理を習ってもらおう。負担は分かち合うべきだよな。我が父。
「じゃあおいしかったらどうする?」
「うっ、そ、それは……」
「春名が散々まずいって失礼なこと言っておいて、おいしかったらどうする?」
 春名は凄く、それはものすごく悩んだ顔をして、それはもうかなり真剣な表情を重ねて、
「お、おいしかったら……」
「おいしかったら?」
 言いづらいらしい。確かにここで不用意なことを口走ったら、俺に何か言われたときに対応できないしね。
「…………ぃって……う」
「ん?」
「おいしい……って、言う」
「ぷ、――フッハハハハハッ!! そうだな、確かにそうだ!」
 まったく、笑わせてくれるわ。笑いすぎて目から涙が出てくる。
「ハハッ、確かにおいしかったらおいしいって言うよな。正しいよ。それでいい」
「むー、おにーちゃんはなんで笑うのさー!」
「ごめんごめん。ふふっ、いや、まぁ思ってた答えとは全然違うことが出てきてびっくりしただけだって」
「だからって笑うことないじゃないかー!」
 俺の胸に顔をうずめて、両手を拳にしてばんばん叩いてくる。痛くするつもりはないらしいから、態度だけだろう。いやーそれにしても。かわいいなぁ。
 いやダメだダメだ。なんか綾香先輩にいじられたおかげで、俺は変なスイッチ入ってるらしい。妹に変な感情抱くとかやばいだろ。いや厳密には妹じゃないし、血も繋がってないけど、そういう意味じゃないよなー。ダメだ。いろいろとダメ人間だな俺。
 後悔しか出てこないというのは最悪の状況なのではないかと自問自答。
「うぅ……」
 なんてしてる時間もなかったらしい。胸の中で泣き始めた春名に少し戸惑ったが、流れにまかせてそのまま抱き寄せた。
「おにーちゃんは……春名のミカタだよね?」
「お兄ちゃんは春名のお兄ちゃんだよ? ミカタじゃないはずないだろう?」
 クサすぎるセリフ。その言葉もこの場面では浮いてない。
「……ありがと」
「どういたしまして」
 かわいいやつめ。
「さて。こんな往来で抱きついてるのも恥ずかしいと思うからそろそろ離れたほうがいいと思うぞ」
「いいのっ。おにーちゃんあったかいからこのままでいる」
「この天気ならむしろ暑いくらいだろ」
「いーのっ」
 なにやらご機嫌な春名。うーん。まぁちょっとぐらいいいか。
 1分ほどそうしてただろうか。幸いにもこの道を通りかかった人はいなかったので、そこまで恥ずかしい羞恥プレイを披露することはなかった。
 春名が離れる。
「かえろっか。おにーちゃん」
 なにやら凄く機嫌のいい声で話しかけてくる春名。
「そうだな。……じゃあとりあえず春名は、おいしいって言う練習な」
「な、なにおー! アイがおいしいの作るとは限らないじゃんかー!」
「そこは食べてからのお楽しみだ」
 帰り道は日も沈み、もう完全に暗くなっていた。
  1. 1990/01/04(木) 02:03:00|
  2. 創作小説
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