電撃文庫と堕落生活*でんだら*

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【ConceCt】第3話 研究所

   第3話 研究所

 研究所。
「ここにあったDNAサンプルと被検体139号の眼球とカスタードプリン誰か知らない?」
「サンプルは第三培養室。眼球は保管庫。プリンは私の体内です」
「ああ、ぼくはとても寂しいよ小夜歌。ただでさえ少ない材料の中からつくったほんの少しの成功品を君に食べられてしまうなんて」
「プリンを茶わんにつくらないでください。まぎらわしいです、そして名前で呼ばないでください」
「それでも君に食べられるのならまだ許してあげられるよ。できればお詫びの印としてハグしてくれないか? ハグ」
「そもそもそんなものをつくっている暇があったら研究を進めてください。ただでさえ進行速度が鈍っているのです。これ以上遅らせないでください」
「なんだ? してくれないのか? 人間の成長にはスキンシップが欠かせないというのに。君は僕が退化して行ってもいいと言うのかい?」
「…………………お前らは会話する気があるのか?」
 ここは誰も立ち入らないような山奥深くのさらに地下にある研究所である。入り口のプレートに『第二研究室』とかいてあるこの部屋にいるのは4人。
 ここの室長であり、眼鏡をかけていて、この中で一番態度が軽い男。更沢芳章。
 副室長であり、室長に敬語を使いながらも冷たく接する女性。西沢小夜歌。
 この狂った人間ばかりの中で一番普通という言葉が相応しい男。高山康祐。
 さっきから一言も話していない、口数が少なく、常に冷めた態度の男。東条木雨。
 彼等四人の他にあと二人の男女、来栖遊矢、紅小鳥を含めた6人がこの建物の中にいる人間全てである。
 この地下にある施設の大きさはかなりある。通常ならばたった六人で使い切れるほどの広さではないのだが、膨大な資料、大量の研究素材、巨大な量子コンピューター、そして無数の円筒状の水槽によって部屋は全て埋め尽くされている。そのたくさんの部屋の中、で数少ないしっかりと整頓されている部屋がこの第二研究室である。
 ここの研究員たちは完全にこの研究所に泊まり込みなので、この部屋が実質上、合宿部屋であり、特になにもしない時にいる部屋であり、生活の拠点なのである。
 ドアが開いて明るく高い声がする。
「あ~つかれた。わたし被検体の観察なんてつまんなーいんだけどぉ。ねえねぇ、だれかトランプしない?」
 まだ幼さの残っている声であり、小鳥は背も小さいので、見た目は中学生にしか見えないが、れっきとした25歳だ。そのわりには言動も幼い。
「あ、いいよー小鳥ちゃん。こっちおいで。僕がおとなげなくスピードで完膚なきまでに叩き潰してあげるよ。それとも相手がなにをもっているかバレバレの二人ダウトでもやろうか」
「なにしてるんですかロリコン所長」
 更沢は西沢の言ったことなど忘れて(と言うか無視して)、小鳥と二人でババ抜きを始めた。
「あんたら仕事しろよ……」
 高山が一人ぼやく。
 そのとき入り口の自動ドアがぷしゅっと間抜けな音を立てて開き、来栖遊矢が入ってきた。
「うい~っす……って、あれ? なんで小鳥ちゃんがいるの?」
「え? なあに?」
 呼ばれた小鳥はかわいい声で返事をする。
「第3実験室って小鳥ちゃんが見てたんじゃないの? ドアが開いてたから気になったんだけど」
 小鳥はぶんぶん首をふって否定する。
「そんなとこいってないよぉ~。高山さんなんじゃないですか?」
「あ? オレはこいつらの馬鹿漫才をずっと聞いてたからもうそろそろ聞き飽きてきたころなんだが、……おい! そこの究極ミジンコ馬鹿二人! 第3実験室にさっき行ったか?」
「なんだね高山君。私はプリンをつくっていてそれどころではなかったのだよ。ああ、それを食べてしまった罪深き小夜子、その事は許してあげるから私を抱き締めておくれ」
「先ほどからいやですと言っているはずです局長。……高山。私だってこんな事を好きでやっているわけではありませんが、局長が絡んでくるのは仕方のない事でしょう。そして私はこのようなどうでもいい事を続けてしまっているので実験などしているヒマはありません」
「ってーと……木雨……はないし……………ということは?」
 
 突如鳴り出したサイレンの音は、当然のことながらその場にいた全員が聞いた。

 一番迅速に動き出したのは高山だった。一瞬にして椅子から立ち上がると叫んだ。
「来栖! 第三実験室の被検体は!?」
「高山君、第三は危険指定レベル5の熊がいるところだよ」
 答えたのは来栖ではなく更沢局長。反対に他の所員は動揺をかくせない。
「ちょっと待ってください局長! あれの入っている檻は私の能力の最高硬度ですよ! それが破られるなどと……」
「ああ、小夜歌、そんな事を言われたところで僕には答えることなんかできないじゃないか。君の能力を信じてはいるが万が一のこともある。ここはみんなで確かめにいくというのでどうかな?」
「ああ、それが一番確実だな」
 高山が答えて、全員で実験室に向かう

 実験室の檻は壊され熊が逃げ出したあとはあったが、肝心の被検体は、研究所、及び周辺1キロには既にいなかった。
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 乙探偵事務所は、通常業務では普通の探偵事務所と同じような仕事、つまりは浮気の実態調査とかいなくなった猫の捜索とかそんなような仕事をやっているのだが(決してどこかのマンガのように殺人事件は頻繁に起こらない)、通常業務とは外れた形でおこなう仕事がある。
 能力者関係の依頼だ。
 表の組織、警察や普通の暴力団などでは対処しきれない依頼を受ける形で高い報酬をもらい仕事を行うのだが、その種類は2つある。
 能力者と言うのは人間にはもともとないような特殊な能力をもっている人のことをいうので、それが表に広まるといろいろと困る事が出てくる。
 それを未然に防ぐのが一つ目の仕事。
 そしてその能力が強力なものになって来ると、銃や人間が扱う武器ではどうにもできない状況にもなる。
 それを解決するが二つ目の仕事。
 たった四人ではカバーできないともおもうが、なにしろ能力者の絶対数が少ない。さらに、個人の能力者は結局は一人でその能力を発揮するのは危険だと気付き組織に頼る事になるので、自然と大きなまとまりが出来てくる。まとまり同士が均衡を保っているために争いは少ない。よって仕事も少ない。しかしそれに反比例して報酬は多いので、事務所にとってそっちの仕事は大歓迎なのである。
 そして………、

「キノさん。依頼って何スか?」
 地下で軽く運動(?)をしてきた龍花が、部屋に入っての第一声がこれ。報酬が入れば所員に還元。つまりは臨時ボーナス。よって龍花はやる気満々。
「というか2回も続けて依頼があるなんて珍しいけどオレは金が入るのでオッケー。ということで依頼内容は?」
 なんて現金な、とおもったそこの馬鹿はこの世は金がないと生きるのが辛くなる事を少し考えていろ。
「生物の捕獲だ」
 簡潔に言った乙。しかし一瞬の硬直ののち、龍花は反論。
「え? また迷い猫の捜索? それは普通の依頼じゃねえか? ボーナス無しじゃねえか」
「安心しろ。お前が思っているような生易しいものではない」
「じゃあ何だって……」
 龍花の言葉を遮るように、
「能力を所持した動物だ」
「……!!」
 黙る龍花に説明をする乙。
「何があったかは判らないし訊く必要もない。ただその能力と個体の種族は判っている」
「……」
 黙り続ける龍花にさらに続ける乙。
「個体は熊。正確にはツキノワグマ、能力は第壱種能力で筋力増加。出発は10時。夜明けまでに捕獲する」
「ちょ、それ無理じゃね? 今の時刻は9時だっつに」
 乙は意に介さず、
「だから急げといっている。1時間で用意しろ。武器もだ」
 しばらくふてくされていた龍花だったが、
「はいはい、判りました。了解リョーカイ」
「あ、龍花さん。今日は山の奥のほうらしいので車で行く事になりましたんで運転は明日香さんに頼もうと思うんですけどちゃんと覚悟しといたほうがいいですよ」
「わかったわか…………………っ!? ちょっと待てそれはオイヲイ……」
「何よ、トラ。じろじろ見て」
「……………いや、何でもない」


 そして事態は動き出す。
  1. 1990/01/04(木) 01:03:00|
  2. 創作小説
  3. | コメント:0
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