電撃文庫と堕落生活*でんだら*

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【ConceCt】第0話 序章

   序章

 取り引きの張り込みをしていたのに、隣にいる森知洸平が喋りかけてきたので見つかってしまい、その場にいた十人全員が追っかけてきたので、そこから全力で逃げている途中なのだが……。
「洸平。いいか? 今からオレの言うことをよく聞け。……黙れ、そして死ね。できるだけオレの遠くで自殺しろ。自害しろ。富士の樹海なんか最高だ」
「え? いやあ自殺なんて真似、僕にできるわけないじゃないですか。僕ができるとしたら、毒薬をこっそり飲料水に混入させることとか、どこかの誰かさんの首と胴体の切り離しの手術とかだけですってば。買い被り過ぎですって」
「洸平、口は災いの元、っつーことわざ知ってるか?」
「知ってますよ。人間の息に含まれてる二酸化炭素で地球温暖化になって異常気象が頻発するって意味ですよね。人間って結構二酸化炭素を吐くんですよ。あ、ここでは<災い>っていうのが今で言う<災害>ってことになってるところがポイントですね。龍花さんそんなことも知らなかったんですか?」
「いやもういい。問答無用で死ね」
 ……逃げている途中なのだが、そんな緊張感など全く感じないままに、バカな話をしながら走っている。
 特に洸平。何故この状況で笑っていられるかは永遠の謎だが、いつもこんなかんじで笑ってるので気にしない。
 オレがもう一度「死ね」と言って会話が途切れた。ついでに、背後にむかってコイルガンを五連発。ついでじゃない気がするのはこの際お構い無し。ちなみにこのコイルガンは市販されていないオレ手作りの自動拳銃で、電磁力の力で弾を飛ばす新しいタイプの銃。火薬を使わないので発射音がしないのがいい所なので愛用品。
 そのコイルガンから発射された五発の弾丸は、背後から追ってきていた一人に全弾命中し、その男を昏倒させる。
 しかし、他の奴らは倒れたやつなど完全無視で追ってくる。さすがに非仲間想いなやつらめ、いやむしろ自分のことしか考えてない自己中心的存在的な存在なやつらと言った方がいいか。まあ、どっちでも意味わからんが。そんな奴らは倒れたやつのことより自分の将来に関わることを優先させている。
 ったく、これじゃあ人質すらとれねえじゃなねえか。
 と犯罪者ばりばりの思考を辿っている龍花だが、相手が犯罪者なのでお互い様だ。と心の中で思っている。
 話しながら走っているうちに、ビルに囲まれてはいるがすこし開けたところに出た。月明かりがほんのりと地面を照らして、路地よりはいくらか明るい。そこに出た瞬間に洸平とアイコンタクトを交わす。会話をやめ、同時に左右に散る。その勢いでオレのかかとまである長髪が風になびく。
 追っ手はその勢いのまま広場に突入。その横手からオレがコイルガンを発射。ねらったのは最前列の男のこめかみ。寸分違わず命中し、そのまま昏倒。
 それに気付いた一人が、自動拳銃をオレにむかって乱射。オレは洸平と違って、弾が当たると十分すぎるほど痛覚神経に刺激を与えてしまうので、もちろん逃げる。再び路地に突入。二人追ってくるが、かなり離れている。当分の間安全と判断。
 少し走ると路地内にある外階段に気付く。全力で駆け登り、三階建てのビルの屋上で休憩。下を見るとさっきの広場がよく見えた。洸平が戦っていた。
 戦闘中でも洸平の顔は笑っている。しかしさっきの笑顔とは微妙に違う。ほとんど同じでわかりにくいが、それを読み取れるくらいには長くつきあっている。……と思う。
 微かに笑いながら洸平は疾る。右手には漆黒に塗られた杖。杖といってもただの棒に等しく、一メートル半の長さと、一センチ五ミリの直径を持つ。両端はやすりで磨いたように丸くなっている。
 その黒杖をたずさえながら疾走。一瞬で一人の男の懐に入り込み、下方からの顎への掌底の一撃で脳震盪を起こさせる。そのまま男を黒杖で突き飛ばし、前方の一人にぶつける。やっと襲撃に気付いた男達が洸平に向け銃を発射。四筋の斜線が闇夜に走る。しかし既にそこに洸平はいない。
 洸平は空高く三メートル舞い上がり、だれひとり気付かないままに、包囲円の外に着地。一番近くの男の頭部に黒杖の一撃。後頭部への突きに生身の人間が耐えられるはずもなくそのまま転倒、気絶。
 残りの四人が気付いた時にはもう遅い。もう一人、さきほど洸平が押し倒した仲間の下にいた男が立ちあがったが、瞬間的に黒杖の餌食になり、残りは三人。
 ここでオレを追い掛けてきた二人がオレを発見。非常階段を登る足音。音を出さないように気をつけているようだが、普通の聴覚のオレでも聞こえるのだからほとんど無意味だ。
 洸平に合図の一射。他のと違い、当たったところで破裂し仲間同士の間で目印になる。合図ついでに命中させておくのも忘れない。結果、ひとり昏倒。オレの合図に気付いた洸平は二人から離れオレのいるビルへと近付く。
 ちょうど背後のドアがあいた。出てくる追っ手二人に牽制の一発を撃ち、そのまま階下へダイブ。三階分、八メートルを落ちていく。
 地面との衝突の直前、下を走ってきた洸平がキャッチ。アンドリリース。やばいマジで怖かった。そんなことをおもいつつオレは体勢を立て直し、前方の二人にむかってコイルガンを放つ。洸平はオレをリリースすると同時に跳躍。壁の突起を足掛かりに三階の高さを登り切る。
 オレがねらった二人は、この段階になってやっと敵の(オレ達の)強さに気付いたのか、走って逃げていく。
 追い掛けようとしたがめんどくさいので完全無欠にほっておく。
 ふと上を見ると洸平が降ってきた。もちろんオレは洸平のようにキャッチ出来ないし、したくもない。よけると、洸平が着地。足のまわりのコンクリートに軽くひびが入っている。軽くオレは言う。
「洸平。地面に根をはるのは植物の特権だぞ」
「すみません。本当は龍花さんの頭蓋骨に根をはらせる予定だったんですけど避けちゃったんで出来ませんでした。残念ですよ」
「いやもうてめえ死ね」
「そんなことより逃がしちゃった二人はどうするんですか?」
 こっちのセリフは完全スルー。
「あ? そんなのキノさんとカナで、何とかすると思うんだが?」
「他力本願ですね」
「死ね。のたれ死ね。腐れ死ね」
「だから僕は死なないんですってば。この前もさっきも言ったかもしれませんけど……って同じことこの前にも言ったんですけどね」
 二人は意味の無いことを言い合いながら、残る二人が逃げた方向に歩いていく。

         *     *     *

「……だからあたしはこんなことはやりたくなかったのよ。だいたいこんな夜遅くまで外にでてたら、変質者でもなんでもねらい放題じゃない。あれ? 狙われ放題? まあいいわ。そんなことはどうでもいいのよ。だからさっきから私が言いたかったのは、行動するなら昼間にしてちょうだい、ってことなの! 睡眠不足はお肌の敵なのよ! わかる所長?」
「森知と沖山は学生だ。昼間は働けないということを判れ」
 洸平と龍花がむかう先には二人の男女がいた。
 二十歳前後の女と年齢不詳の男。男のほうは強いて言うなら三十代。
 前者は龍花にカナと呼ばれた女で、後者はキノさんと呼ばれた男である。
 女は名前を高梨明日香といい、男は名前を乙 一と言う。
 明日香が一方的に喋り立て、乙はときおり口を挟む。という会話がずっと続いている。明日香が吠える。
「そんなの学校を休めばいいのよ。だいたい仕事を持ってる人間なら本業はもちろん仕事じゃない! その本業をほっぽっといて勉強なんかやってる方が悪いのよ! むしろやめるべきよ! べきよ! べき!」
 人さし指を路地の先に向けて、明日香がビシッと言い切る。
「考え方は個人の自由だと俺は言う」
 すぐさま切って返す乙の言葉に反論しようと明日香は口を開けたが、でてきた言葉は反論の言葉ではなかった。
「所長、話の途中で不本意だけど、右斜め四十ニ度、三百メートル前方に対象二人の足音をみつけたからさあ、さっさと行きましょう! さっさと行ってさっさと帰ってさっさと寝るのよ!」
「森知と沖山はどこだ?」
 興奮する明日香に対し、乙は何の感慨も抱かないような声で言う。
「トラと森知君? その後ろ五十メートルくらいを歩いてるわよ。まったくあいつら、逃がしてんじゃないっていつも言ってるのに!」
 走り出す明日香の後ろを乙が歩いていく。歩いてるはずなのに明日香と同じスピードなのが不思議である。
 すぐに明日香達は洸平達が逃がした二人に出会った。
「そこの二人、いい加減止まりなさい! こっから先に行くんなら私に通行料一人五万円渡していきなさいよ。五万円渡すんなら通してあげないこともないかな-という、明日香さんのとっても広い心が情状酌量の心をもってあんた達をどうにかしないまでも通してあげたりしちゃったりするかもしれないわ! わかったならさっさと金を出すのよ。いい? じゃああと三秒のうちに出さないなら……」
 バラララララララッ。
 明日香の支離滅裂な言葉を最初は驚いて聞いていた敵二人だが、落ち着き、自分を取り戻したので、二人はとっとと意味不明な女を抹消するべく、マシンガンの引き金を引いた。
 正確に明日香の脳にポイントされた弾は、その頭を粉々にくだけ散らすと思われたがしかし、連続で発射される弾は一発たりとも当たらない。いや、当ってはいるが、それは明日香にではない。明日香の目の前に、不可視の壁が立ちふさがり、マシンガンの弾はそこで金属音を立てて地面に落ちていく。
「あんたたちこの私にむかって危ないもんぶっ放したわね。覚悟しなさい。そして絶望したあとに後悔させてあげるわ」
 いまだ驚き覚めやらぬ二人に対し、明日香は一歩で近付いて回し蹴りを放つ。男は咄嗟に防御したが予想をはるかに超えるスピードで迫る右足に反応しきれずにノックアウト。流れるように隣にいる男にも近付き、股間を蹴り上げ二人目ノックアウト。武装した男二人を三秒で倒してしまう。
「所長、ありがとね。まあ私は避けられたとは思うけど助けてもらって悪い気はしないわ。それでもやっぱり仕事は昼にするべきよ」
「話題は一つに絞れ」
 明日香と乙はさっきと同じような会話をしながら洸平達のところに向かって歩いていった。
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  1. 1990/01/04(木) 01:00:00|
  2. 創作小説
  3. | コメント:0
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